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2008年11月 アーカイブ

2008年11月12日

事業概要・詳細

活動名
人里に出没するクマ対策の普及啓発および地域支援事業

趣旨・目的
2004年の北陸地域を中心とする人里へのツキノワグマ(以下クマと略)大量出没に引き続き、2006年にも全国的にクマの大量出没が起こった。その結果、142件の人身事故が発生し、全国で4,340頭ものクマが捕殺された。一日も早く科学的管理によって人とクマとの共存が進むことを期待したいが、その道のりは決して容易ではない。そのため、クマ対策の中で市民・民間レベルでできることから着手するのが現実的である。そこで本事業では、人里に出没するクマ対策の普及啓発と地域活動支援を推進し、人とクマとが共存できる社会基盤を整備することを目的とする。

意義
クマの保護管理を進めるには行政的な対応は必要不可欠であるが、加えて行政対応をバックアップするような普及啓発や地域活動が重要である。本事業では、一般市民への普及啓発を推進し、地域に根ざした小回りの利く活動を支援するところに意義がある。

効果
本事業により、
1)クマに対する正しい知識が一般市民に啓発され、今後のクマ出没対策を考える土壌ができあがる。
2)クマの出没を防ぐための地域活動が実践され、いくつかのモデルケースが生まれる。3)クマによる人身事故の発生原因や背景が検証され、今後の人身事故防止に向けた対策 の根拠が得られる。
4)クマに関する問題について適切で即時性のある情報が発信され、
国民の正しい理解とより相応しい対応がなされるようになる。

活動の概要
1)クマ対策教育キット(ベア・トランク)を活用した一般市民に対する普及啓発の実践:クマ対策キットの開発・製作ならびに授業の実施。
2)電気牧柵、柿もぎ、薮払い、危険地域パトロールなどの地域活動の支援:地域活動の支援費(市民や地方自治体との協働を含む)。
3)クマによる過去の人身事故の情報収集ととりまとめ。
4)1)~3)で得られた情報の収集と一般への発信

期間 平成20〜22年度 3年間

事業母体 日本クマネットワーク(JBN) 代表:山崎晃司 事務局長:佐藤喜和

助成機関 独立行政法人環境再生保全機構 理事長:湊 亮策

地球環境基金とは・・・
地球環境基金ホームページ http://www.erca.go.jp/jfge/index.html 

地域支援事業:北海道(浦幌)

北海道(浦幌):佐藤喜和

目的
北海道東部における防鹿柵を利用したヒグマの農地侵入防止対策の普及
方法
北海道東部浦幌町釧路市音別町、白糠町において、各町役場に、電気柵設置モデル事業を希望する農地を募集してもらい、その農地に電気柵を設置する。実行主体は、防鹿柵を利用した電気柵設置についてこれまでにノウハウを蓄積してきた浦幌ヒグマ調査会(代表:佐藤芳雄,事務局:佐藤喜和)が担う。浦幌ヒグマ調査会のボランティアと、状況に応じて、役場担当者、農家等と共同で作業を行う。また、電機柵設置に加えて、下草刈りや藪払いなども並行して行い、ヒグマにとっての農地侵入に対する精神的コストを高める方法を普及していく。被害防止効果を見るために、定期的に農地を見回り、電気柵のメンテナンスと被害状況の確認を行う。

期待される成果
電機柵の設置により、対策実施農地へのヒグマによる農地侵入件数は大きく減少することが見込まれる。また、役場担当者や被害農家は、簡便な電機柵設置と草刈により被害が軽減することを実感でき、また周辺農家への普及促進が期待される。

スケジュール: 6-7月  事業対象農地選定
       8月上旬 草刈・藪払い・電機柵設置
        8-9月  農地見回り
        10月   電気柵撤収

2008年度 地域支援事業

目的
人里に出没するクマ対策として行われている、電気牧柵、柿もぎ、薮払い、危険地域パトロールなどの地域活動を支援する。

作業部会
コーディネーター
坪田敏男(北海道大学獣医学研究科)

佐藤喜和(日本大学生物資源科学部)
藤村正樹(アウトバック)
丸山哲也(栃木県自然環境課)
溝口紀泰(南安曇農業高校)
横山真弓(兵庫県森林動物研究センター)  

2008年度は北海道、岩手県、長野県、兵庫県の計4地域において事業を行いました。

各事業概要、報告については以下のリンクからご参照ください。


 北海道(浦幌)
 
 岩手県

 長野県
 
 兵庫県

地域支援事業:岩手県

岩手県:藤村正樹

目的
岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。

方法
ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者からの支援を受け、平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。本支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、不足している資材を提供し、さらに10月に予定されている地域の集まりにおいて、専門家や学生による発表を中心としたミニシンポジウムを開催することにより、被害農家が自ら取り組んでいるクマ被害対策の継続とさらなる促進を、物心両面から支援する。
実施主体は(自立を促すためにも)盛岡市猪去地区自治会とし、日本クマネットワーク、岩手大学、盛岡市、盛岡市動物園公社、盛岡市猟友会のそれぞれの関係者は、自治会をサポートする形式とする。

期待される成果
多数の外部者(主に学生)が無償のボランティアで、被害農家の畑やりんご園周辺の藪や草を刈り払いし、電気柵の設置を手伝うことにより次の成果が期待できる。

(1)学生ボランティアに触発され、被害農家にクマ被害対策への自立心が芽生え、地域での共同作業(連帯)が促進されることが期待できる。

(2)被害農家にとって、自分たちの息子や孫と同じ世代の多数の学生が地域に入り、地域住民と共同で汗を流す(地元民と交流)ことにより、被害農家特有の疎外感が払拭され、さらに地域住民に活力が蘇ることも期待される。

(3)(既に設置されている)電機柵の設置距離を延長することにより,対策実施農地へのクマによる農地侵入件数及び被害面積は大きく減少することが見込まれる。

(4)市役所の担当者や被害農家、猟友会会員は,簡便な電機柵設置と草刈により出没及び被害が軽減することを実感でき,また周辺農家への普及促進が期待される。さらに、当該地区の被害対策の取り組みがモデル事業となり、盛岡市内の他の地域への普及促進も期待される。

(5)被害農家を含む地域住民の、クマ学術調査に対する理解と協力を得られることが期待できる。さらに、研究者や学生、市の担当者、猟友会関係者が共同作業を継続的に実施し、コミュニケーションを円滑にすることにより、地域の自治会を中心とした官学民ネットワークが形成され、ツキノワグマに対しての地域住民の正しい知識と理解が深められことが見込まれる。

(6)1〜5の結果、当該地域での人とクマとの軋轢が減少し、有害捕獲によるツキノワグマの捕殺も減少することが期待される。

スケジュール:7-9月  草刈・藪払い・電機柵設置
         10月  発表会・ミニシンポジウム

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2008年11月17日

事業報告:北海道(浦幌)

2008年度


浦幌ヒグマ調査会および日本クマネットワーク共催による
電気柵設置作業報告

日本大学

伊藤哲治


浦幌ヒグマ調査会と日本クマネットワークとの共催による地域支援事業として、北海道十勝郡浦幌町上浦幌地区のビート圃場2箇所にて、ヒグマの圃場侵入を防ぐために電気柵の設置作業をおこないました。

まずは、作業をおこなうための圃場の下調べをおこない、2箇所の圃場を選定しました。
そして日本大学生物資源科学部の学生らの協力のもと、電気柵設置作業と、その後のメンテナンスおよび見回りを行いました。


2008年8月13日のビート圃場にて電気柵設置作業を行いました。
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作業の様子

この圃場は、作業の2日ほど前に進入被害があり痕跡もありました。
山からの侵入を防ぐために張られた防鹿柵と畑の境に川が流れており、その周辺にはかなりうっそうと草本が茂っていたので見晴らしがかなり悪く、容易にヒグマが進入できる状態でした。下の写真は作業前と作業後の圃場の様子です。

       
畑周辺
作業前
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作業後
防鹿柵周辺(山側)後
防鹿柵周辺(山側)
作業前
防鹿柵周辺(山側)前
作業後
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防鹿柵周辺(谷川)
作業前
防鹿柵周辺(谷川)前
作業後
防鹿柵周辺(谷川)後

草刈りと電気柵の設置作業後、かなり見晴らしも良好になり、ヒグマも畑に侵入しにくい環境となりました。


2008年8月15日ではビート圃場で作業をおこないました。
  

電気柵設置のための碍子(がいし)つけ作業 碍子(がいし)つけ作業漏電対策のためのつる植物除去作業 つる植物除去
作業後の防鹿柵周辺の様子.
作業後作業後

この圃場は、前日の圃場よりも草本が茂っておらず、
草刈作業も電気柵設置作業も難なくこなしていくことができました。



作業後、上記2箇所のビート圃場および周囲の農地について、8月13日から9月8日の間に見回りを行いました。電気柵を設置した1箇所目の圃場に侵入はありませんでしたが、2箇所目の圃場では、電気柵が張られていない所から侵入したと考えられるクマの痕跡(防鹿柵に付いていた毛、足跡、ビートの食痕)がありました。
今後は設置後のメンテナンスと、侵入する可能性のある箇所への対策が求められると考えられます。

以上で、2008年度浦幌ヒグマ調査会および日本クマネットワーク共催による電気柵設置作業報告を終わります。

地域支援事業:兵庫県

兵庫県:横山真弓

目的:
兵庫県はツキノワグマ個体群の絶滅回避と出没被害の軽減を目的として、出没個体に学習放獣を行っている。放獣個体には発信器が装着され、森林動物研究センターにより、定期的に個体の位置をモニタリングしている。リアルタイムで接近の有無をいち早く察知するために、地域住民による有害個体(学習放獣済み)の集落接近モニタリング方法の確立することを目的とする。
方法:出没多発地域において、3,4集落の住民に受信機を貸出し、学習放獣した個体が自分の集落や周辺集落に接近しているかどうかをモニタリングしてもらう。調査手法については、ひょうごWCM研究グループ(WCM:Wildlife Conflict Management)(代表:鈴木克哉)の調査員からモニタリング手法等の指導を行うとともに、森林動物研究センターが定期的にモニタリングしているクマの位置情報を担当住民に知らせる。また、注意を要する個体の情報交換を行う。担当住民は、クマの集落接近時には、速やかにメールにて情報をセンターへ連絡し、県、市町、研究センターで対応策を検討するなどの仕組みを構築する。

期待される成果:
ツキノワグマが被害行動を起こす兆候を早めに察知し、次の出没被害管理を実施することが可能となる。ツキノワグマの行動に関する情報源を増やす。住民がツキノワグマの行動や学習放獣の意義を理解する。地域住民による野生動物対策のノウハウを指導し、地域における指導的な立場の人材を育成する。


スケジュール:
6月 現地趣旨説明と候補者選定
7月 手法の指導
8月~12月 本格実施

地域支援事業:長野県

長野県:溝口紀泰

目的:
地元住民が主体となって取り組む集落へ野生動物(クマ、サル、シカ等)の侵入を防ぐ(予防する)活動(柿もぎ活動、竹林整備、電気柵の設置、遊休農地の整備等)を定着させる。さらに、その活動を通し、地域の活性化を目指す。特に、野生動物を里へ誘因する大きな原因作物である「柿の実」を早期に住民が収穫する動機づけとして、「干し柿利用」と「柿渋利用」ができないか検討する。また、農業教育において、野生動物(哺乳類)の問題を教材化可能か検討する。

方法:
地域に外部の人(特に都会の住民)を招き、農村体験や自然体験をしていただくことで、地元住民自身に自分の地域の良さを再発見してもらう。農業高校でクマと共存する活動を行っている団体に、農業被害防止の方法等に関する授業をしていただく。

期待される成果:
自分が生まれ育った地域の良さを再発見した地元住民は、自分たちの力だけで、野生動物との棲み分けに必要な諸活動を活発化することが期待される。特に、野生動物を誘因してきた「渋柿の実」を「干し柿」や「柿渋」に活用することで、「渋柿」の需要を高め、渋柿が野生動物を誘因する前に収穫し、野生動物の人里への侵入を予防する生活スタイルを確立する。農業高校でのクマ授業で、農業被害の防止を含む野生動物との共存活動が、農業教育に必要であるということが認められれば、野生動物(哺乳類)の問題を継続的に授業内で取り扱うことが可能となり、他の農業高校へも波及が見込まれる。

スケジュール:
7月15日(火)南安曇農業高校の高校生へのクマ授業 (信州クマ研)
       7月13日(日)簡易電気柵の設置講習会 (サル柿大学)
       10月25日(土)竹林管理と柿もぎ用竹竿作り(サル柿大学)
       11月 1日(土)柿もぎ(サル柿大学)
       11月 8日(土)柿もぎと干し柿作り(サル柿大学)
     8月下旬~9月上旬 柿もぎと柿渋作り(サル柿大学・獣害対策支援センター)

事業報告:長野県南安曇

長野県南安曇 地域支援事業報告

7月13日は、サル柿大学の受講生(農業に興味のある都会の人が中心)により、簡易電気柵を設置しました。サル柿大学の農場は、サルやシカなどの農業被害をよく受けたため、耕作が放棄された畑を1反(10a)ほど借り受け、農作物の栽培や地域伝統文化(農産物の加工を含む)を、地元の人を講師として学習しています。設置した電気柵は、受講生が中心となり、草刈りや電圧チェック等の維持管理をしています。電気柵は、農場に常設し、他の受講生や、電気柵に興味のある方への展示を兼ねています。
http://www.inakataiken.net

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7月15日は、長野県南安曇農業高校の環境クリエイト科39名を対象に、信州ツキノワグマ研究会が、「クマ授業」および「電気柵の設置実習」を行いました。「クマ授業」ではクマの生物学的な講義と、クマに出会った時の対処方法について学習しました。「電気柵の設置実習」では、校内のトウモロコシ圃場2aほどに、電気柵の設置を行いました。北アルプスの山麓に位置する学校の生徒ですが、ツキノワグマに関する知識や出会った時の対処法は、これまで学校で習ったことがなく、生徒はとても真剣に学習していました。今後、北アルプスの自然を含め、継続して大型野生動物と共存していくことについて、学校(小・中・高)での学習が必要であると思われました。

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