■岩手県:藤村正樹(岩手県ツキノワグマ研究会 事務局長)
目的:
岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。
方法:
ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている
盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の
獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者、NGO関係者などからの支援を受け、
平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。
本支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、
不足している資材を提供し、さらに10月に予定されている地域の集まりにおいて、
専門家や学生による発表を中心としたミニシンポジウムを開催することにより、
被害農家が自ら取り組んでいるクマ被害対策の継続とさらなる促進を、物心両面から支援する。
実施主体は(自立を促すためにも)盛岡市猪去地区自治会とし、
日本クマネットワーク、岩手大学、盛岡市、盛岡市動物園公社、盛岡市猟友会、
NGOのそれぞれの関係者は、自治会をサポートする形式とする。
期待される成果:
多数の外部者(主に学生)が無償のボランティアで、被害農家の畑やりんご園周辺の
藪や草を刈り払いし、電気柵の設置を手伝うことにより次の成果が期待できる。
(1)
学生ボランティアに触発され、被害農家にクマ被害対策への自立心が芽生え、
地域での共同作業(連帯)が促進されることが期待できる。
(2)
被害農家にとって、自分たちの息子や孫と同じ世代の多数の学生が地域に入り、
地域住民と共同で汗を流す(地元民と交流)ことにより、被害農家特有の疎外感が払拭され、
さらに地域住民に活力が蘇ることも期待される。
(3)
(既に設置されている)電機柵の設置距離を延長、拡充することにより、
対策実施農地へのクマによる農地侵入件数及び被害面積は大きく減少することが見込まれる。
さらに、被害対策に関心の薄かった農家が(積極的に対策に取り組む)他の農家や
ボランティアの活動に触発され、被害対策に関心を持つことが期待される。
また、これまで被害対策に消極的だった農家も、自発的に電気柵を購入するなど、
積極的に被害対策に取り組むことも期待される。
(4)
市役所の担当者や被害農家、猟友会会員、NGO関係者は、簡便な電機柵設置と
草刈により出没及び被害が軽減することを実感でき、また周辺農家への普及促進が期待される。
さらに、当該地区の被害対策の取り組みがモデル事業となり、盛岡市内の他の地域への
普及促進も期待される。
(5)
被害農家を含む地域住民の、クマ学術調査に対する理解と協力を得られることが期待できる。
さらに、研究者や学生、市の担当者、猟友会関係者が共同作業を継続的に実施し、
コミュニケーションを円滑にすることにより、地域の自治会を中心とした官学民ネットワークが
形成され、ツキノワグマに対しての地域住民の正しい知識と理解が深められことが見込まれる。
(6)
1〜5の結果、当該地域での人とクマとの軋轢が減少し、有害捕獲によるツキノワグマの
捕殺も減少することが期待される。
さらに、被害対策に積極的な農家に、電気柵や草刈以外の被害対策にも関心が広がりつつあるので、
本事業を通してJBNが蓄積している様々な被害防除策や情報を彼らに伝授することにより、
他の地域のモデルとなりうるような、被害農家で構成された高度な経験と技術を有した
被害対策実施集団が育成されることが期待される。
スケジュール:
7-9月 草刈・藪払い・電機柵設置・音響装置設置
調査報告会
10月 発表会・ミニシンポジウム