« 2009年03月 | メイン | 2010年01月 »

2009年07月 アーカイブ

2009年07月23日

2009年度 地域支援事業計画

(目的)
人里に出没するクマ対策として行われている、電気牧柵、柿もぎ、薮払い、危険地域パトロールなどの地域活動を支援する。

(地域)
平成20年度:北海道(浦幌)、岩手県、山梨県、長野県、兵庫県の5地域と長野県の評価1件

(作業部会)
◯坪田敏男(北海道大学獣医学研究科)、佐藤喜和(日本大学生物資源科学部)、
藤村正樹(アウトバック)、吉田 洋(獣害対策支援センター)、溝口紀泰(南安曇農業高校)、
横山真弓(兵庫県森林動物研究センター)、桜井 良(フロリダ大学・NPO信州ツキノワグマ研究会)

◯:コーディネーター


2009年度は北海道、岩手県、山梨県、長野県、兵庫県の計5地域において事業を、
長野県において評価1件を行う予定です。


各事業概要、報告については以下のリンクからご参照ください。


 北海道
 
 岩手県

 山梨県
 
 長野県
 
 長野県(評価)
 
 兵庫県

地域支援事業:北海道(浦幌・白糠)

■北海道(浦幌・白糠):佐藤喜和(日本大学・浦幌ヒグマ調査会)

目的:
北海道東部における防鹿柵を利用したヒグマの農地侵入防止対策の普及

方法:
北海道東部浦幌町、白糠町において、各町役場に、電気柵設置モデル事業を希望する
農地を募集してもらい、その農地に電気柵を設置する。

実行主体は、防鹿柵を利用した電気柵設置についてこれまでにノウハウを蓄積してきた
浦幌ヒグマ調査会(代表:佐藤芳雄、事務局:佐藤喜和)が担う。
浦幌ヒグマ調査会のボランティアと、状況に応じて、役場担当者、農家等と共同で作業を行う。
また、電機柵設置に加えて、下草刈りや藪払いなども並行して行い、
ヒグマにとっての農地侵入に対する精神的コストを高める方法を普及していく。

被害防止効果を見るために、定期的に農地を見回り、電気柵のメンテナンスと被害状況の確認を行う。

スケジュール:
6-7月  事業対象農地選定
8月上旬 草刈・藪払い・電機柵設置
8-9月  農地見回り
9月   電気柵撤収

期待される成果:
電機柵の設置により、対策実施農地へのヒグマによる農地侵入件数は
大きく減少することが見込まれる。また、役場担当者や被害農家は、
簡便な電機柵設置と草刈により被害が軽減することを実感でき、
周辺農家への普及促進が期待される。

地域支援事業:岩手県

■岩手県:藤村正樹(岩手県ツキノワグマ研究会 事務局長)

目的:
岩手県盛岡市で実施されている官学民によるクマ被害対策活動への支援。

方法:
ツキノワグマによる被害が毎年発生し、複数のクマが有害駆除で捕殺されている
盛岡市猪去地区の自治会では、岩手大学の教授、学生、盛岡市動物公園公社の
獣医師、盛岡市の担当者、猟友会関係者、NGO関係者などからの支援を受け、
平成19年度からクマ被害対策に取り組んでいる。

本支援事業では、猪去地区自治会が実施しているクマ被害対策において、
不足している資材を提供し、さらに10月に予定されている地域の集まりにおいて、
専門家や学生による発表を中心としたミニシンポジウムを開催することにより、
被害農家が自ら取り組んでいるクマ被害対策の継続とさらなる促進を、物心両面から支援する。

実施主体は(自立を促すためにも)盛岡市猪去地区自治会とし、
日本クマネットワーク、岩手大学、盛岡市、盛岡市動物園公社、盛岡市猟友会、
NGOのそれぞれの関係者は、自治会をサポートする形式とする。

期待される成果:
多数の外部者(主に学生)が無償のボランティアで、被害農家の畑やりんご園周辺の
藪や草を刈り払いし、電気柵の設置を手伝うことにより次の成果が期待できる。

(1)
学生ボランティアに触発され、被害農家にクマ被害対策への自立心が芽生え、
地域での共同作業(連帯)が促進されることが期待できる。

(2)
被害農家にとって、自分たちの息子や孫と同じ世代の多数の学生が地域に入り、
地域住民と共同で汗を流す(地元民と交流)ことにより、被害農家特有の疎外感が払拭され、
さらに地域住民に活力が蘇ることも期待される。

(3)
(既に設置されている)電機柵の設置距離を延長、拡充することにより、
対策実施農地へのクマによる農地侵入件数及び被害面積は大きく減少することが見込まれる。
さらに、被害対策に関心の薄かった農家が(積極的に対策に取り組む)他の農家や
ボランティアの活動に触発され、被害対策に関心を持つことが期待される。
また、これまで被害対策に消極的だった農家も、自発的に電気柵を購入するなど、
積極的に被害対策に取り組むことも期待される。

(4)
市役所の担当者や被害農家、猟友会会員、NGO関係者は、簡便な電機柵設置と
草刈により出没及び被害が軽減することを実感でき、また周辺農家への普及促進が期待される。
さらに、当該地区の被害対策の取り組みがモデル事業となり、盛岡市内の他の地域への
普及促進も期待される。

(5)
被害農家を含む地域住民の、クマ学術調査に対する理解と協力を得られることが期待できる。
さらに、研究者や学生、市の担当者、猟友会関係者が共同作業を継続的に実施し、
コミュニケーションを円滑にすることにより、地域の自治会を中心とした官学民ネットワークが
形成され、ツキノワグマに対しての地域住民の正しい知識と理解が深められことが見込まれる。

(6)
1〜5の結果、当該地域での人とクマとの軋轢が減少し、有害捕獲によるツキノワグマの
捕殺も減少することが期待される。
さらに、被害対策に積極的な農家に、電気柵や草刈以外の被害対策にも関心が広がりつつあるので、
本事業を通してJBNが蓄積している様々な被害防除策や情報を彼らに伝授することにより、
他の地域のモデルとなりうるような、被害農家で構成された高度な経験と技術を有した
被害対策実施集団が育成されることが期待される。

スケジュール:
7-9月  草刈・藪払い・電機柵設置・音響装置設置
      調査報告会
10月  発表会・ミニシンポジウム

地域支援事業:山梨県

■山梨(富士北麓地域):吉田 洋・藤園まり(獣害対策支援センター)

目的:
人里およびその付近におけるツキノワグマ放置誘引物(柿)の除去

方法:
山梨県富士吉田市、南都留郡富士河口湖町において、「第二回柿渋隊」および
「第三回柿とりたい会」を実施する。両イベントでは、地元のみならず、
全国各地から参加者を募り、収穫する予定のない柿を収穫し、加工する。

「第二回柿渋隊」では、8月に青柿(未成熟の柿の実)を収穫し、柿渋の原料をその場で作り、
それを参加者各々が持ち帰って発酵させ、利用してもらう。
「第三回柿とりたい会」では、11月に成熟した柿の実を収穫し、参加者に干柿の作り方を教え、
持って帰ってもらう。なお、収穫の予定のない柿は、市町の担当課の協力を得て、募集する。

事項主体は、過去の「柿渋隊」および「柿とりたい会」の実施主体で、
これまでに誘引物除去とイベントの運営のノウハウを蓄積してきた市民団体
「獣害対策支援センター(代表:佐藤永史郎、事務局:藤園まり、顧問:吉田洋)」が担う。
獣害対策支援センターのボランティアと、農家等と共同でイベントを行う。

また、両イベントでは収穫だけでなく、講演会も実施し、野生動物と地域がおかれている現状、
被害対策の効果等を普及啓発する。

期待される効果:
人里における誘引物を除去することにより、ツキノワグマによる集落への出没件数が大きく減少することが見込まれる。また、講演会により、地元への獣害対策に関する普及促進が期待されるとともに、都市-農村間の相互理解の促進が期待される。

スケジュール:
5月  柿の募集
8月  第二回柿渋隊
11月  第三回柿とりたい会

地域支援事業:長野県

■長野県:溝口泰紀(南安曇農業高校)

目的:
地元住民が主体となって取り組む集落へ野生動物(クマ、サル、シカ等)の侵入を防ぐ(予防する)
活動(柿もぎ活動、竹林整備、電気柵の設置、遊休農地の整備等)を定着させる。
さらに、その活動を通し、地域の活性化を目指す。
特に、野生動物を里へ誘因する大きな原因作物である「柿の実」を早期に住民が
収穫する動機づけとして、「干し柿利用」ができないか検討する。
また、農業教育において、野生動物(哺乳類)の問題を教材化可能か検討する。

方法:
地域に外部の人(特に都会の住民)を招き、農村体験や自然体験をしていただくことで、
地元住民自身に自分の地域の良さを再発見してもらう。
農業高校でクマと共存する活動を行っている団体に、
農業被害防止の方法等に関する授業をしていただく。
今年はクマのテレメトリー調査の学習を取り入れたい。

期待される成果:
自分が生まれ育った地域の良さを再発見した地元住民は、
自分たちの力だけで、野生動物との棲み分けに必要な諸活動を活発化することが期待される。
特に、野生動物を誘因してきた「渋柿の実」を「干し柿」に活用することで、
「渋柿」の需要を高め、渋柿が野生動物を誘因する前に収穫し、
野生動物の人里への侵入を予防する生活スタイルを確立する。
農業高校でのクマ授業で、農業被害の防止を含む野生動物との共存活動が、
農業教育に必要であるということが認められれば、野生動物(哺乳類)の問題を継続的に
授業内で取り扱うことが可能となり、他の農業高校へも波及が見込まれる。

スケジュール:
10月25日(日)竹林管理と柿もぎ用竹竿作り(サル柿大学)
11月 8日(日)柿もぎと干し柿作り(サル柿大学)

7月中旬  簡易電気柵の設置講習会 (サル柿大学・南安曇農業高校)
9月上旬  南安曇農業高校の高校生へのクマ授業 (信州クマ研)

地域支援事業:兵庫県

■兵庫県:横山真弓(兵庫県立大学/森林動物研究センター)
地域に根差したツキノワグマ対策を目指した取り組み方法の確立
―地域住民による有害個体の集落接近モニタリングとクマ学習指導者の育成―

・地域住民による有害個体の集落接近モニタリング
出没多発地域において、3,4集落の住民に受信機を貸出し、学習放獣した個体が
自分の集落や周辺集落に接近しているかどうかをモニタリングしてもらう。
森林動物研究センターからモニタリング手法等の指導を行うとともに、
研究センターが定期的にモニタリングしているクマの位置情報を担当住民に知らせる。
また、注意を要する個体の情報交換を行う。担当住民は、クマの集落接近時には、
速やかにメールにて情報をセンターへ連絡し、県、市町、研究センターで対応策を検討するなどの
仕組みを構築する。2008年度は野外教育施設所属の地域住民1名と森林組合所属の
地域住民1名がモニタリング技術の習得し、継続モニタリングしている。
今年度は、さらに他の野外教育施設や集客施設の職員などの地域住民に技術指導を行い
モニタリング手法習得者人数を増やす。

・クマ学習指導者の育成 
ツキノワグマの多く生息する地域にある野外教育施設と連携し、
ツキノワグマを素材にした環境教育指導者を育成する。
またツキノワグマに関する教育プログラムを試作する。

地域:
兵庫県香美町
(香美町は、ツキノワグマの生息分布中心部である氷ノ山山系の北部山麓にあたり、
2002年ごろから、出没が目立ち始めた。
また、兵庫県ツキノワグマ保護管理計画に基づいた学習放獣の実績の多い地域である。

スケジュール:
6月 現地趣旨説明と候補者選定
7月 クマ学習指導者対象のセミナーを開催する
8月以降 新たなモニタリング習得者への指導

地域支援事業:長野県(評価)

■長野県の評価:桜井良(フロリダ大学・NPO法人信州ツキノワグマ研究会)

目的:
本調査では、2008年度日本クマネットワークの地域支援助成事業である
長野県の「都会の人を巻き込んだ柿もぎ活動と高校生に対する
農林業被害防止に関する教育」の事業評価を実施する。

評価を行う目的は、
・事業目標の達成度を測定すること
・第二次的な成果や予期しなかった影響を測定すること
・事業の長所と短所を特定すること
・費用と便益の側面から事業を分析すること
・事業効果の向上の可能性を探ること
である。

方法:
本調査では外部の評価者が実施されてから半年から約1年が経過した
当事業の総括的評価(プログラムが十分に実施されたのちに行う全体的な
影響・成果の評価)を実施する。

柿もぎ活動と柿もぎ用の竹笹作りに関して
○参加者(スタッフも含め)、地元住民、そして行政担当者への聞き取り調査
○聞き取り調査の結果を基にロジックモデルの作成

※ロジックモデルとは事業がどのような効果を上げたかを、事業のために利用された資源、
計画された活動、達成したいと期待された変化や成果の関わりといった指標を用いて
体系的に図式したものである。

2009chiikisien_zu.PNG

図1.ロジックモデルの読み方


■南安曇農業高校の高校生に対する農林業被害防止に関する教育について

○授業及び実習に参加した高校生に対するアンケート調査及びフォーカス・グループ・ディスカッション
○北米環境教育連盟による「質の高い教育のためのガイドライン」を用いてのクマ授業の内容に関する評価

期待される成果:
聞き取り調査によって、事業推進者や助成金交付団体は、参加者や近隣の住民、
そして行政担当者が当事業についてどのように評価しているのかを把握することができ、
客観的に事業を振り返ることができる。またロジックモデルを作成することで
当事業に対する人的・財政的投資がどのように目標達成に貢献し、
更に事業の今後の改善をもたらすかを視覚的に理解し、その成果を戦略的にモニターし、
管理し、報告するためのシステムを生み出すことが期待される。
一方、クマ授業と電気柵の設置実習に実際に参加した高校生を対象にした
アンケート調査及びフォーカス・グループ・ディスカッションより、
これらの活動がもたらした効果(高校生の意識、知識、行動の変化等)を把握することができる。
また、授業で使われた教材をガイドラインを用いて見直すことで、
当プログラムの長所と短所、そして今後改善できる点等を発見することが期待される。

スケジュール:
2009年7月-8月 ・活動の参加者、地元住民、そして行政担当者への聞き取り調査
・授業及び実習に参加した高校生に対するアンケート調査及
びフォーカス・グループ・ディスカッション
8月-9月 ・ロジックモデルの作成
・北米環境教育連盟によるガイドラインを用いてのクマ授業の内容に関する評価

About 2009年07月

2009年07月にブログ「人里に出没するクマ対策の普及啓発および地域支援事業」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2009年03月です。

次のアーカイブは2010年01月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type 3.38