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2009年03月 アーカイブ

2009年03月30日

普及啓発事業

2008年 普及啓発事業


【普及啓発事業:全体概要】

 人里に出没する地域のクマ対策の充実など、人とクマとが共存できる社会基盤を構築するためには、クマが出没する地域の人々をはじめ、一般市民へのクマに関する正しい知識の普及が欠かせません。そこで、JBN会員を中心にクマ教育キット(ベア・トランク)の開発をおこない、一般市民への教育活動を実施します。また、教育キットの貸し出しをおこない、学校での授業やイベントなどを通して、一般の人々にクマを知り・考えてもらう活動を草の根的に広げていくことを目指します。
 2008年度は、まず3地域で教材の開発を行いましたが、これをベースに他地域での活動の実施やそれぞれの地域に応じた教材の開発をおこないながら、活動を展開していきます。


目的
この啓発事業は、クマに対する正しい知識が一般市民に啓発することを通して、今後のクマの出没対策を考える土壌をつくり、行政が進めるクマの保護管理対策をバックアップすることを目的としています。

地域
平成2008年度:北海道、関東、長野県の3地域


内容
 普及啓発事業は、①クマ教育キットの開発と製作 ②小学校などに出向いての授業の実施が主な活動です。教育キットは主に小学生等の子供を対象とした内容で、ヒグマ編とツキノワグマ編を製作します。また、2010年度までに教育キットの貸出しを開始することを目指しています。
 また、クマ授業を実施しながらプログラムや教材の改良をおこない、教育キットを充実させていきます。


スケジュール
今年度から以下のスケジュールで事業を進めていきます。
2008年度:
・クマ教育キットの開発・製作(基本となる教材づくり)
・小学校等での授業の試行
2009年度:
・クマ教育キットの開発・製作(教材の追加と改良、各地域の状況にあわせた内容の追加をおこなう)
・小学校等での授業の実施
2010年度:
・クマ教育キットの開発・製作(指“者向けガイドブック、ファクトシート等の作成など)
・小学校等での授業の実施
・指“者向け講習会の開催

進捗状況
 2008年11月に全体コーディネーターとと北海道、関東、長野地区の代表者が集まり、事業の進め方について打合せをおこないました。現在、各地区で教材づくりをすすめています。次年度以降は、他の地区にも対応できるコンテンツを追加し、活動に広がりをもたせていきたいと考えています。

普及啓発事業:北海道地区報告

〈北海道地区報告〉
ヒグマ・トランクキットを用いた普及啓発活動について

担当者:植木玲一、坪田あゆみ、○坪田敏男、西澤次訓、前田菜穂子

〈目的〉
 小学校低学年の子ども達を対象にヒグマを通した環境教育を提供します。その際に使う教材としてトランクキット(毛皮、ぬいぐるみ、頭骨、標本、紙芝居、かるた、絵本等)と教育ガイド(Teachers guide)を準備します。この活動を通して、子ども達が野生動物や自然環境に興味・関心を持ち、未来の共生を支える担い手に育つことが最終的な目的です。

〈2008年度トランクキット準備状況〉
1.購入品目
1)トレーニング用カウンターアソ―ルト 4個
2)クマよけ鈴 2個
3)クマよけホイッスル 2個
4)絵本「ヌプとカナのおはなし」
5)かるた「ヒグマかるた」
6)ヒグマ毛皮(注文済) 2枚
7)ヒグマ頭骨(借用予定) 6個
8)トランク(教材の貸し出し・運搬用) 1個
9)トートバッグ(教材運搬用) 1個

2.制作品目
1)布製実物大シルエット 1枚
2.5 m布パネル、ヒグマ直立220 cm
、エゾシカ肩高100 cm

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~実物の大きさを自分と比較して実感する~
2)新生子ぬいぐるみ 1体
布製、体重420 g、頭胴長17 cm
~生まれたてのヒグマの重さと大きさを実感する~
~親グマとの重さの違いを人間の場合と比較する~

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3)胃内容物の標本サンプル 各1
7種(ミズナラ、コクワ、ヤマブドウ、サケ、
マタタビ、草本、コーン、ヤマブドウとサケ)
~ヒグマの食性を知る~

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〈今後の予定〉
 今後は、トランクキット品目のさらなる充実と普及啓発活動の実施を目指します。また教育手法に関しては、トランクキットを活用した環境教育の先行事例である知床財団の試みを参考にさせていただき、紙芝居(絵本)のストーリーに沿いつつ、かつトランクキット教材を随時使用しながら普及活動を実施します。教育ガイドの作成にも着手します。

普及啓発事業:長野県地区報告

長野県地区報告

ツキノワグマ・トランクキットを用いた普及啓発活動について

担当者:濵口あかり、中下留美子、四方田紀恵、高畠千尋、林秀剛

〈目的〉
ツキノワグマの生息地域に住む住民達を対象に、ツキノワグマについての正しい知識を提供します。その際に使う教材としてトランクキット(毛皮、頭骨、糞・足型の標本、紙芝居、絵本、ぬいぐるみ等)とパンフレットを準備します。この活動を通して、その地域に住む人々が、身近な事として野生動物問題や環境について感心を持ち、自分達に出来ることを考え、行動できる様になることを目指しています。

〈2008年度トランクキット準備状況〉
1.購入品目
1)トレーニング用カウンターアソ―ルト 2個
2)南部熊鈴 2個
3)クマよけホイッスル 2個
4)ベア・アタックス上下 各1冊(計2冊)
5)ポリエチレン樹脂(注文済) 20kg
6)手形用粘土 2個
7)紙芝居用厚紙 20枚
(現在保有済み;毛皮1枚、クマ頭骨1個、シカ頭骨2個、キツネ頭骨1個、ニホンジカ角1本、ぬいぐるみ等)

2.制作品目
1)ポリエチレン樹脂封入・クマの糞(準備中)
秋のどんぐり(ミズナラ等)を含んだ糞を採集済み。
カビ除去のため乾燥機で乾燥後、ポリエチレン樹脂を用いて封入を行う予定。


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    乾燥機と乾燥中の糞 


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現在のトランクキット内の様子


〈今後の予定〉
 トランクキットについては、現在までに保有しているものに加え、製作中の品目(糞・足型のサンプル)の完成と内容のさらなる充実を目指し、それらを活用しながら普及啓発活動を実施する予定です。具体的には、担当者が所属するNPO信州ツキノワグマ研究会が現在までに行ってきた普及啓発活動にプラスαを加えながら、紙芝居なども新たに作成しつつ、トランクキット教材による普及啓発活動を実施します。また、生態や行動、であってしまった時の対処法などの配布資料(パンフレット)の作成にも着手する予定です。


関東・長野合同活動報告

普及啓発事業:関東地区報告

クマ・トランクキットを用いた普及啓発活動について

担当者:亀山明子、坂元香織、丸山哲也、井手桂子、小笠原洋介

〈目的〉
小学校中学年の子ども達を対象にツキノワグマの生態を理解し、クマと遭遇したときの対処法について理解してもらうことを目的として、小学校などでの授業で実施できる教育プログラムセット(ベア・トランク)を製作します。普段目にする機会がほとんどないツキノワグマをより身近にかんじてもらえるように、毛皮や足型、写真や映像など、誰にでもわかりやすい教材を用意します。また、ベア・トランクの貸し出しに向けて、教育プログラムを実施する人向けの教育ガイド(Teachers guide)を製作します。子供を中心としてクマへの正しい知識を伝える活動を草の根的に広げていくことがこの事業の最終目標です。

〈プログラム内容〉
・小学校中学年でもわかる内容をベースとする
・学校での授業で実施することを想定

1.クマのすごいところ(クマの身体能力):15~20分
2.クマって何をたべているの?(食性や生息環境などクマの生活史):15~20分
3.クマに遭ったらどうするか(クマに出会わない方法、出会った時の対処):15~20分


<これまでの活動内容>
2009年1月に長野地区メンバーと合同活動として栃木県の小学校でクマ授業を実施しました。
また、教材に必要な物品の購入や、教材の製作を進めています。

1.物品の購入

1)トレーニング用カウンターアソ―ルト 4個
2)クマよけ鈴 4個
3)クマよけホイッスル 4個
4)絵本「ツキノワグマのいる森へ」
5)絵本「クマのすむ山」
6)ツキノワグマ毛皮 2枚
7)人間の歯型 1個
8)水タンク 2個
9)コンテナ(教材貸し出し用) 2個
10)トランク(教材運搬用) 1個


2.教材の制作

1)ツキノワグマ頭骨(借用)の標本製作 2個

長野県からツキノワグマ頭骨を借用し、教材用の頭骨標本づくりをおこないました。
クマの頭骨は、クマの体や食性、生態などの特徴を解説する時に使います。

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クマの頭骨標本製作風景。根気よく丁寧に骨から肉をそぎ落とします。

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完成したツキノワグマの頭骨標本。


2)他の動物の歯型模型づくり(製作中)

クマの食性について、他の動物と比較しながら解説するために使います。シカやキツネなどの頭骨から樹脂で歯形をとります(現在製作中)。


3)クマの足型模型づくり(製作準備中)

本物のクマの足型をシリコン樹脂を使って製作します。上野動物園で飼育されているツキノワグマから足型をとる予定です(動物園のツキノワグマは現在冬眠中で、冬眠からさめたら足型を取る予定)。

4)クマの能力、生活史についての解説資料
写真や映像、図やグラフなどを使ってクマについてわかりやすく解説する資料を製作中です。

5)クマに遭ったときの対処法についてのプレゼン資料

クマに出会わない方法、出会ったときの対処法について、クイズ形式で学んでもらうパワーポイント資料を製作中です。

〈今後の予定〉
今後も引き続き教材の開発をおこないます。地域の小学校のほか動物園でのクマ教育プログラムを実施し、対象者に応じたプログラム構成の工夫やコンテンツの改良をしていきます。また、トランクキットを使う人のための教育ガイドの製作や、クマ授業実施場所やトランクキット貸し出し先など、クマ教育のニーズの掘り起こしもおこなっていきます。


関東・長野合同活動報告

普及啓発事業:栃木県でのクマ授業の実施

栃木県でのクマ授業の実施
(関東地区・長野地区の合同活動)

 関東地区の教材開発と活動展開の足がかりとして、すでにクマ活動の実績がある長野地区メンバーの協力のもと、1月16日に栃木県塩谷町の学校でクマ授業を実施しました。関東地区メンバーの丸山哲也氏(栃木県自然環境課)の協力で、クマ授業の実施を希望する小学校を探し、実施までの学校との連絡調整を担っていただき、クマの出没する地域の学校で授業をおこなうことができました。

【実施内容】

 2009年1月16日、宇都宮より電車で1時間ほど余り、塩谷町にある船生(ふにゅう)小学校にJBN会員5名が出向きました。栃木県は過去に盛んだった林業が衰退し、現在は大手製造企業の工業団地が県内に広がっていますが、りんごや家畜の飼料作物であるとうもろこしなどの農産物生産は依然として盛んであり、ツキノワグマの出没により農業被害も出ているとのことです。

 先生方や栃木県職員、森林組合の皆さんが見守る中、長野県のJBN会員、濱口あかりさんによる動物クイズがスタート。溌剌とした濱口さんのトークとスクリーンに次々と映し出される貴重な写真の数々に、全校生徒総勢50名あまりの子供たちは身を乗り出し、適宜、投げかけられる質問にも元気よく手をあげて答えていました。たぬきをレ–サーパンダと答えた子供も中にはいましたが、豊かな自然に恵まれた地域で暮らしているためか、野生動物への関心が高く、また知識も予想以上に豊富でした。

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 次にツキノワグマの頭骨や糞、足跡などを子供たちに回覧し、基本知識を伝えたところで、クマとの遭遇を回避する方法、万が一、遭遇した場合の対処方法などを丁寧に説明。授業も中盤に差し掛かる頃、クマの着ぐるみ(JBN会員の中下留美子さん)が登場し、子供たちを喜ばさせました。クマが遠くにいる場合、突然、遭遇した場合、コグマに出会った場合など、想定されるいくつかのケースごとに子供とクマによるロールプレイが展開。クマに向かって歩いて“く子供、静かに後ずさりする子供などそれぞれにクマが巧みに対応し、クマの一挙一動に子供たちは声をあげ、楽しみながら正しい知識を身につけたようです。

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【実施後ふりかえり】

(良かった点)

・身近であるけれど気づかれていない動物の存在を、子ども達が授業の前よりも身近に感じてくれている気がしました。
・特に動物の写真などでは、興味をもって答えてくれる児童が多く、足跡や糞なども、今後の参考にしてくれればと思います。
・感想文で、“今までこういう授業をしたことがなかったから、楽しかった。”という内容が多く寄せられたことから、知りたいという思いは垣間見ることができた気がします。
・教師の方たちも自分達の知らない動物が身近に居たなど興味を持ってくれることで、授業により身近な自然に目を向ける内容が盛り込まれることを期待します。

(今後の課題、必要なもの・事など)

・1時間(小学校だと45分)の中で、いろいろな知識を盛り込むことは難しい。
・何度かに分けて伝えるか、伝え切れなかった部分はワークシートや、配布物で補っていく必要があります。
・口頭で伝えることと、読んで理解してもらうことを分ける事で、より伝えたいことを印象付けることができるかもしれない。
・関東地区のクマ授業の展開は、クマの出没する地域に住む子供と、クマの出没しない都心の子供のクマや野生動物に対する基礎知識や興味のレベルが大きく異なると思われます。コンテンツ開発には、この点を考慮する必要があります。
・クマが出没する地域でのクマ授業の実施にあたっては、その地域を理解する人を通じて、ニーズのある場所を探すことが重要。教育キットの内容充実だけでなく、クマ授業を実施する場所や、ベア・トランクの貸し出し先など、クマ教育ニーズの掘り起こしが、関東地区の今後の課題です。

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